株式会社東北紙業社
トウホクシギョウシャ
[業種]大分類:製造業 中分類:パルプ・紙・紙加工品製造業 小分類:その他のパルプ・紙・紙加工品製造業
厚紙の打ち抜きを得意とする紙加工メーカー
東北紙業社は、プレスによる紙の打ち抜き加工を専門にしている紙加工会社です。どんな紙も抜きますが、東北紙業社 千歳工場は特に厚紙の抜き加工を得意としていて、板紙L版サイズ(1100mm ×800mm)までの抜きができます。このサイズまで可能な加工業者は都内では稀です。
紙の打ち抜きが最もよく使われるのは、商品のパッケージに使われる紙箱の製造です。同社はこの紙箱の打ち抜きもやりますが、メインにするのはPOP関連や箱以外の紙グッズの抜き成形です。特に、他ではできるところが少ない、モデルの等身大写真を使うような厚紙の大サイズPOPが得意です。
打ち抜きは抜型で行いますが、これは、合板をレーザーカッターで抜く製品の形に切り抜いて、その隙間に帯状の刃をはめ込んだものです。関東では抜型をビク型ともいいますが、これは最初の打ち抜き機がドイツ製のビクトリア印刷機を改造して作られたためです。打ち抜きも「ビク抜き」とか単に「ビク」といったりします。ちなみに関西ではトムソン型式打ち抜き機が最初だったため、打ち抜きを「トムソン」と呼ぶことがあります。
同社ではビク抜きでは無く、先代社長が開発に携わった平盤打ち抜き機の手動、半自動、全自動打ち抜き機をそろえて、多様な注文に応えています。
全自動機は1100mm ×800mmまでの紙が通せる大型機で、厚紙でも抜けるよう改良しているため、通常1時間で4000~5000枚プレスしますが、同社ではふつうの厚さの紙でも3000枚プレスぐらいしか回りませんがその分、ツナギ(バリ)が小さくて済みます。また、試し抜きをお客様に見てもらってから機械を回すことにしていて、丁寧な仕事で品質を確保する努力をしています。
さらに同社は、この打ち抜き加工を微細化できる腐食刃加工の技術も持っています。エッチングによる化学的手法で作った精密な抜型を使う打ち抜きで、0.6mmの高さの刃で幅0.8mmの打ち抜きも可能です。
また、国内でも数少ない紙象嵌(ぞうがん)加工の技術を持っているのも特色の1つです。象嵌というと、貝殻などで模様や絵を描いた工芸品が思い浮かびますが、紙象嵌は、紙の上に別の紙で描いた絵や文字をプレスで嵌め込む加工法です。印刷とも箔押しとも違う味わいがある表現ができます。
打ち抜き加工で独自路線を行く
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厚紙の打ち抜き加工
紙類、樹脂シート等のどのような打ち抜きにも対応しますが、中でも他では難しい大型の厚紙の打ち抜きができることを特色としています。
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デザイナーからの直接発注
印刷会社経由の2次加工発注のほか、デザイナーや制作者から直接依頼を受けて、提案をしながら打ち抜きの製品や作品をつくることも多くあります。
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紙象嵌、腐食刃加工
通常の打ち抜き加工のほか、紙の上に型抜きした紙を嵌め込む紙象嵌や、微細な抜き加工ができる腐食刃加工といった特殊な加工も可能です。
デザイナーとの協業でビジネスに変化
「大学のときにこの仕事をバイトで手伝って、やってみたら面白くてそのままずっとです」
と笑うのは同社の若手、加藤清隆氏。バイトを始めたのは15年前の1997年12月、バイトを紹介したのは大学が同じだった小野幸弘社長の娘さんで、加藤氏の現在の奥様です。
紙の打ち抜き加工は、製本などと同様に印刷物の二次加工というとらえ方が一般的なため、従来から注文のほとんどは印刷会社からでした。受注は印刷会社から、というのが当然になっていて、社会構造によりその他へ自分たちのことを発信出来なかったと加藤氏は言います。しかし同社のメイン取引先の印刷会社からの発注は社会の情勢により減少傾向にあります。その中で、平成14年頃から現社長を含む当時の二世会と紙の販売会社の活動により、デザイナーの方々に向けて情報を発信するようになり、少しずつ仕事を受注するようになりました。
「4年前ぐらいからデザイナーさんの加工のお手伝いや説明を任せてもらえ、実感が出てきたのが2年前くらいからです。デザイナーさんの想像から、どういうものを作ろうか、こうすればできる、といろいろデザイナーさんと話し合って、提案をしながら加工方法を考えていくのは楽しいことです」(加藤氏)
「うちは厚くて大きいものが得意ですが、ふつうの抜きもお客様の確認を取りながら丁寧にやるので、価格とスピードの競争では勝てません。技術はあって当たり前、技術を売るつもりはありません、ただ会社や私達と一緒に仕事をやりたいと言って頂ける様にするだけです。単価を安く大量にやるというやり方もあるし、私たちのようなやり方もあって、それぞれで成り立つと思っています」(同)
以前、あるデザイナーさんの依頼で、1枚の大きなシール紙に、7000個の小さな穴を半抜き状態で抜くという大変な仕事をしました。穴部分をはがすとデザインが表れる仕掛けで、この作品はニューヨークのデザイン展で受賞しました。加藤氏の思い出に残る仕事です。
業界内コラボと異業種コラボで新しい道を拓く
2年半前、同社ほか異なる紙加工技術を持つ6社が集まって、デザインと紙加工の新しい可能性を探る「印刷加工連」というグループをつくりました。製本・穴あけ・折り・綴じ・型抜き・箔押しなどのエキスパート集団です。具体的活動として現在、新しいデザインのオリジナル紙文具の開発、製造、販売、および受託開発、展示会への参加、WebやSNSでの情報発信を行っています(http://inkaren.tumblr.com/)。
「加工連には、紙加工の組み合わせで新しいことを生み出したいという、私と同じ思いの人たちがいます。加工連にデザイナーさんが直接コンタクトを取ってくるケースも多くなっています。今後加工連では、もっと新しい展開を探って楽しんでいきたいと考えています」(同)
そしてもう1つ、加藤氏が考えているのが異業種とのコラボレーションです。若手後継経営者のための“すみだ塾”や、工場体験イベントの“スミファ”に参加する中で異業種の人脈ができたと言います。
「抜き加工は金属加工にもありますが、紙の場合とは加工方法が違います。技術を教えあって、お互いに新しい発想の加工法が生まれる可能性があります。すみだでしかできないコラボを探っていきたいです」(同)
さらに、職人の技術の継承も大きな課題だと見ています。
「昔からある、手動の加工機を扱える職人が年々減っていきます。手動の加工機は単純構造の為、融通が利き、加工には無くてはならない機械なので、ぜひ技術を残していきたいです。このほかにも昔からある抜きの技術は多くあって、それをどう継承するのかが問題です。そのために若い人へ先ず抜きと言う加工を知って頂く事が必要だと思います。この技術を無くさないためにも、後継者を育てていかなくてはいけませんから」
と、加藤氏は打ち抜き加工にかける思いを語っています。
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