オリオン工業株式会社
オリオンコウギョウ
[業種]大分類:製造業 中分類:印刷・同関連業 小分類:印刷業
プラスチックへのインクジェット印刷をリードする
オリオン工業は、プラスチックのプレートや成形品への印刷加工と表面レーザー加工を中心として、様々な製品、部品への精密印刷、表面加工を行うメーカーです。
同社でこの数年、事業のメインの座を占めているのがスマートフォンのカバーの生産です。大小さまざまな顧客から次々に持ち込まれるデザインを印刷してOEMのスマホカバーを納めるほか、オリジナル製品のデザインと生産も行っています。このスマホカバーの印刷は、以前は従来技術のシルク印刷かパット印刷を利用していたのですが、2年前に、プラスチックへの印刷が可能なUVインク(紫外線硬化型インク)を使うインクジェット式のデジタルプリンターに切り替えました。まだ国内でも導入例が少なかったプリンターでしたが、シルク印刷が苦手とする凹凸のある板への印刷や、パット印刷ではできない広い面積への印刷ができる上、印刷の版が不要でデジタルデータさえできれば即フルカラーで1個から印刷できます。この導入は同社にとって画期的でした。
「導入後、中国でカバーを作っているという、初めてのお客様が来社されたことがあります。サンプルが届くまでに1カ月かかり、本製品の納期も品質的にも満足できないというお話でしたので、その場でデザインをお預かりして、10分でサンプルを作成してお見せしたのです。お客様は非常に驚き、すぐに当社への発注が決まりました」
こう語るのは、同社社長の佐々義也氏です。今では即日サンプルを送り、3~4日で注文数全てを納品する体制が確立しているそうです。こうしたインクジェットプリンターで実現したスピードが同社の強みとなっているのです。じつはこのインクジェットプリンター、パチンコの遊戯台やゲーム機のプラスチック板への印刷に使われたのが最初で、同社でもこの分野がスマホカバーに次ぐ柱となっています。
さらに同社には、表面加工の幅の面からも強みになっている事があります。それは、アルミ蒸着+フルカラー印刷+レーザー加工という、3つの表面加工を自社内で切れ目なく連携させている点です。アルミ蒸着で光沢のあるメタリック面を生成し、インクジェットプリンターでフルカラー印刷を行い、さらにYAGレーザーでインク層や蒸着層を剥離して精密な描画や立体表現を施すという一連の加工が、1社内で短時間にできるため受注の幅を広げています。
印刷と表面処理加工を組み合わせた強み
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デジタルプリンターの活用
プラスチック成形品への印刷に、凹凸面にも印刷可能な高性能インクジェットプリンターを採用し、納期と品質の両面で優位性を獲得しています。
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蒸着、レーザー加工も一括
インクジェットによるフルカラー印刷に加え、アルミ蒸着による光沢面加工とYAGレーザーによる精密表面加工を一括で行う体制を築いています。
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精密機器筐体の印刷加工
埼玉県の八潮工場では、精密印刷とレーザーマーキング技術を活かして、大手精密機器メーカーから筐体への文字印刷と表面加工を受託しています。
お客様の依頼に“NO”と言わないのが身上
オリオン工業の設立は2003年、携帯電話端末の外装部品の成形加工がスタートでした。折からのケータイブームに乗って会社は急成長したのですが、5年後に受注が一気にダウン。スマートフォンの登場と国内携帯電話機メーカーの撤退でした。
「月の売上が10分の1にまで落ち込み、会社をやめようかと考えました」
と佐々氏が言うほどでしたが、そこにたまたま入ったのがパチンコ台のプラスチック板の印刷加工の仕事。これが短期間で月産17万台分にまで伸びて業績はV字回復したのです。同じ頃、大手精密機器メーカーから外装への精密印刷で引き合いがあり、別工場をつくって受託することにしました。
「品質に厳しくて短納期という携帯電話機での経験が生きました」(佐々氏)
ところが、パチンコ台の印刷加工があまりに伸びたため、少量を残して中国へ生産が移転されてしまい、またも経営の危機に見舞われます。
「そこで次に取り組んだのがスマホのカバーの印刷で、徐々に設備も整えて受注を拡大してきました」(佐々氏)
これが、現在の同社のメイン事業になったのです。
「経営方針は特に決めていませんが、あえて言えば、お客様に“NO”と言わないこと。うちは印刷屋ですが、お客様の“こんなのできる?”に全て応えます。携帯電話の外装部品製造以来のつながりで、海外を含めて協力メーカーの広いものづくりルートがあって、金型でも成形でも加工でも、ほとんどのご依頼に対応できる自信があります」
と佐々氏は胸を張ります。
ものづくりの楽しさを次の展開に結びつける
人気スマホの新機種発売に向けて、いま同社はそのカバーの生産を金型から準備しているところです。新しいスマホを買ったユーザーは、まずキズを防ぐカバーを買い、次に自分好みのカバーを探して着け替え、平均スマホ1台当り2.5個のカバーを使用するという話があります。それだけカバーの需要は大きく、ビジネスチャンスがあります。佐々氏も自ら、オリジナルカバーの販路開拓に向けて営業に回っています。
「しかし、スマホのカバー印刷加工ではやがて他のところも追いついてくるでしょう。カバーのビジネスもいずれ終わります。次は何か?3Dプリンターも出てきましたし、技術も次々に変化します。そこでの新しい仕事を見つけていきたいと思います。」
と佐々氏は次の新事業に思いを巡らせています。幸い八潮工場の大手向け事業は継続性があり、激しい変化に対応する経営を支える力になっています。
「この仕事にはものづくりの楽しみがあります。数10社のお客様がありますが、そこで頼まれた製品の試作を“できましたよ”と持って行ったときの楽しさです。言われて作るのでなく自分で作る楽しみですね。社員にも自分の思い通りにやってもらい、夜中に作ったものを“できました”と持ってくるのも楽しみです」
何度も厳しい時期を越えてきたオリオン工業がスマホカバーの次に切り拓く市場は何か、それを佐々社長自身が楽しみにしているようです。
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