株式会社NACAMURA
ナカムラ
[業種]大分類:製造業 中分類:印刷・同関連業 小分類:製本業,印刷物加工業
独自の技術で市場をつかむ紙加工のエキスパート
いま、株式会社NACAMURAの製本技術「ECO*TOJI(エコ綴じ)」が、環境意識の高い企業や安全性を重視する業界の印刷物に広く採用され、注目されています。
ECO*TOJIとは、針金を使わない中綴じ製本で、中央の折り部分に特殊な糊を引いて熱圧着する中綴じ製本法。10年ほど前に、同社が折り機メーカーと共同開発しました。印刷物をリサイクルでき異物混入も防止できるため、医薬品、食品、化粧品メーカーをはじめ幅広い業種の企業がパフレット、製品説明書、DMなどへの利用を進め、現在では同社の売上の30%近くをECO*TOJIが占めるほどになっています。
さらに2013年、同社はこのECO*TOJIをさらに進化させる技術「SMRAT GLUE」を発表しました。新開発の専用糊インキを他のインキと同時に印刷する方式を導入し、糊代の幅も数ミリと細くしてECO*TOJIの可能性を広げます。
NACAMURAは、こうした独自の技術開発を数多く手がけている製本業の企業です。商品カタログ、PRパンフレット、DMといった商業印刷物を中心に、断裁、打抜加工、特殊折、のりつけ加工、中綴製本など、幅広い加工技術と設備を備えた事業展開を行っています。その上で独自性の高い加工技術を備えることで、縮小傾向が続く製本市場でも受注を確保、拡大することに成功しているのです。
その加工技術の代表例としては、ECO*TOJIのほかにDM加工技術の「TCPS」メイラーシステムがあります。これは、封筒とカタログを一体化したDMの作成技術で、自動化ラインが型抜き、ミシン入れ、折り、綴じ、貼り付けから宛名印刷までを一貫処理します。サイズ、面数、折り方、開封方式などで20タイプ以上の仕様に対応しています。
紙加工技術を磨き続ける力をもつ
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針金レス中綴じのECO*TOJI
針金を使わず糊で綴じるECO*TOJI(エコ綴じ)は、環境にやさしく、幼児にも安心で、封入時に引っかからない製本として需要が大きく伸びています。
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「TCPS」メイラーシステム
TCPSは、外装と情報紙面を一体化したDMを、自動ラインでスピーディに一貫加工するシステム技術です。見直される紙のDM活用を支えています。
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高精度な紙加工技術
ペーパー・プロセッシング・カンパニーを標榜し、常にクリエイティブで高精度な断裁、型抜き、折り、綴じの技術を追求し続けてニーズに応えています。
「SMRAT GLUE」事業が経産省の“新連携計画”に認定
前述したECO*TOJIの新技術、「SMRAT GLUE」による事業計画が、平成25年(2013年)10月16日、経済産業省関東経済産業局から「新連携計画(異分野連携事業分野開拓計画)」の認定を受けました。事業計画とは、NACAMURAをコアとして女神インキ工業株式会社、株式会社正栄機械製作所の3社が連携し、SMRAT GLUEを使った新製本システムの事業化を図った計画です。平成25年の「新連携計画」には、同局管内11都県で7件が認定されましたが、東京都からはSMRAT GLUE事業がただ1件の認定でした。
この異分野連携事業分野開拓(通称・新連携)というのは、異業種の複数の中小企業が連携を組んで、お互いの強みを生かした高付加価値の新製品を創出する取り組みです。その事業計画が有望と認められると、計画段階から専門家の一貫した支援を受けることができ、「新連携計画」として申請し認定されると、最大3000万円の補助金交付を受けることができます。
今回NACAMURAは他の2社と共同で、糊を含む印刷資材SMRAT GLUEの開発と新たな糊綴じ製本システムの開発を進めた結果、その事業化には「新連携」の支援に値する大きな可能性があると評価されたものです。
他にないオンリーワンの製本をめざして
「あの製本会社は何かやっているぞと注目されること。あの加工をやったのはNACAMURAだ、あそこに頼めば面白いことができるぞと言ってもらえることを目指してきました」
と語るのはNACAMURAの社長、中村健一氏。
あるDCブランドファッションメーカーのPR誌の製本を、30年以上続けています。その最近の作品には、何ともアクロバティックな製本技が盛り込まれています。「どこにもできない製本をやってきた」と中村氏は胸を張ります。
厳しい市場環境が続いている製本業界にあって、東京都製本工業組合の副理事長でもある中村氏は、製本業の地位向上を叫んできました。製本は印刷物製作の最終工程として重い責任を負っていますが、それに比して仕事の価値は過小に評価されてきたと言います。
「ただ注文が来るのを待っていてはいけないのです。製本業はずっと職人がやってきて、職人のまま経営もやってきたところが多いのですが、それではだめなのです。当社は、新しい加工を実現するために加工機メーカーと共同開発をしています。機械をカスタマイズして当社でしかできないことを可能にして、オンリーワンの提案をしてきました」(中村氏)
同社の本社別館にはプレゼンテーションルームがあります。ここで、お客様のアートディレクターやデザイナーと共に、紙加工のプロとして印刷物のプランニングを話し合っています。こうした活動はかつての製本業にはなかったことでしょう。
「おもてなしです。お客さまに対しておもてなしの気持ちを持って、ニーズに応えていくということなのです」と、中村氏は言います。
BtoCのブランド確立に向けた折り紙
ORIGAMI FOR CRANE。つまり、折り鶴のためのおり紙。これは、NACAMURAが自社ブランドで販売するオリジナル商品です。モノトーンのストライプとドット柄を組み合わせた折り紙は、折る方向で印象の違う2種の鶴を折ることができます。同社と話題の店舗づくりを行っている山田遊さん(株式会社メソッド)とのコラボレーションで、アーティストの高橋理子さん(株式会社ヒロコレッジ)のデザインにより生まれました。すみだブランド認証の「すみだモダン」で2011年度の認証商品にも選ばれています。
「2010年に社名をNACAMURAにしたのを機に、新しい分野として、一般消費者向けのBtoCビジネスに踏み出そうと考えました。そのブランディング構築の第一歩が、折り紙プロジェクトでした。もちろん、本業の製本業での収益をしっかり担保した上での展開です」
と、中村氏が話します。じつは折り紙の断裁が同社の創業の原点。戦前、紙を正確な真四角に裁断するには、熟練の職人技が必要だったのです。このORIGAMI FOR CRANEの商品化には、紙加工に生きる同社の思いとクリエイティブな遊び心が込められているのです。
「いまの製本業の一番の問題は、後継者がいるかどうかです。若い人に<可能性と夢があると思わせるような仕事>をしていなくてはいけません」
と語る中村氏には大手メーカーで研究員として働く息子さんがいて、すでに後継者となる意志を固めているそうです。「私とはまったく違うネットワークを持っていますから、会社の新しい展開を拓いていけると思います」と期待を寄せています。
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