株式会社三進製作所
サンシンセイサクショ
[業種]大分類:製造業 中分類:生産用機械器具製造業 小分類:その他の生産用機械・同部分品製造業
成長を求めて量産事業を縮小する決断をする
三進製作所は、家電や音響機器などに入る金属部品の金型製作からプレス加工を行う会社として1968年に創業しました。ワイヤー放電加工機を導入してからは、金型製作や試作部品をこの機械を活用して製造するようになりました。工程としては小さな穴を開けた金属のブロックに金属のワイヤーを通し、それを水中に沈め、ワイヤーに放電することで溶融させながら切断を行います。数値制御によってワイヤーを動かすため、円と直線といった複雑な形状の加工が可能となりました。創業当時は、テレビ、テープレコーダー、カーラジオなどに使用するイタバネや薄物部品の金型製作やプレス加工をメインに行っていましたが、時代の流れとともにプリンター、コピー機などのOA機器関連の部品製造、併せて携帯電話の薄物小物部品の量産を請負っていました。製造する製品の変化は、それらのメーカーが国内から海外に生産拠点が移るたびに起きていました。そのような変化の影響を受ける中で、二代目の代表取締役の丁官一郎(ちょうかんいちろう)氏は量産事業を縮小する決断をします。その理由は、国内に残っている量産の仕事は、競合する同業者が多いために、その仕事を獲得しようと単価を下げて提示することになり、忙しい割にはコストダウンがあり利益が少なく、会社の成長に期待が持てなくなってしまったからです。
(画像:小型の金属部品にワイヤーカット加工を行っている様子)
Webサイトで自社の強みをアピールする
量産事業を縮小した際に、ベンチャー企業やデザイナー、大学、個人の方で小ロット・短納期を求める方に注目してもらおうと、自社のWebサイトを立ち上げました。前面に打ち出したことは、同社が得意とするワイヤーカット加工をメインとした薄物、小物金属加工全般に関わる案件を短納期で対応するということでした。それを実現できる理由は、22種類もの様々な加工設備と20種類ほどの豊富な金属材料の在庫があるからです。鉄系や非鉄金属以外に金、銀、プラチナなどの貴金属類も仕入れから加工までできることも丁官代表取締役は話してくれました。Webサイトの立上げを機に、量産のBtoB(企業間で行われる取引)から小ロットのBtoBとBtoC(企業が一般の消費者に対してモノやサービスを提供する取引形態)に、販路を広げることが出来ました。現在のお客様は、ベンチャー企業やデザイナー、アクセサリー作家、個人の方と多彩です。ジュエリーや装飾品を作られているお客様の中には、工芸品では世界的な賞を受賞した方やMoMA(ニューヨーク近代美術館)に展示されている方などもいました。
代表取締役の丁官一郎(ちょうかんいちろう)氏
常にお客様の要望(精度、価格、納期)に近づける
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量産時代の技術を活かした高い品質
指で掴めるかどうかという小さな弱電部品の加工や様々な種類の金属を扱ってきた経験があるからこそ、高い品質の製品を作ることが出来ます。
(画像:金型で金属製のレリーフの輪郭のみを抜く技術) -
技術と技能で価格の要望に応える
製造工程では余計なコストが掛からないように、これまで培ってきた技術と技能を活かしていますが、単に他社より安い価格だけを求める案件はご遠慮させて頂いているそうです。
(画像:要望に合わせて様々な加工機械を駆使する) -
お客様の事情に合わせた納期対応
複数の加工機械と金属の材料を自在に扱うことのできる職人がいるため、対応力の問われる試作や数個単位の小ロットの製造に短期で対応することができます。
(画像:量産のために機械を稼働させていないからこそ突発の対応が可能)
金属加工で困ったら三進製作所
丁官代表取締役は、「技術と技能と創意工夫が活きている小さな町工場と、依頼者の夢と自由な発想が組み合わさることで、わが社でしか生まれないこだわりのあるものづくりを目指している」と言います。例えば、ジュエリーデザイナーからは、イヤーカフなどの様々なアクセサリーの製造依頼があります。依頼の特徴としては、イメージの実現に妥協をしないという点だそうです。そして、量産などの工業製品とは異なり正確な図面が無いため形にすることが非常に難しいそうです。依頼される方はどのような設備や方法で加工するかまでは分かりません。丁官代表取締役がそのイメージの実現に最適な加工方法を選択します。自社の設備で加工できない場合は、これまで築いてきた同業者や地域のネットワークを活用して、最適な方法で実現させます。依頼者のために柔軟な思考ができるように、頭の中は常に軽くさせ、作業は職人技を提供することを常に意識しています。なぜ、様々な方から依頼が集まっていると思うかと丁官代表取締役に訊ねたところ「みなさん、そこまで丁寧な対応をしてくれる工場に出会えなかったのかもしれない」と、照れくさそうに話してくれました。「みなさんの相談にとことん付き合うと、その方との仕事は続きますね」と、リピートされるお客様が多いことを教えてくれました。
釣具のカスタムパーツなどの特別な依頼にも挑戦
工場へ訪れる方に対する姿勢
丁官代表取締役は、「私の所には、他で面倒をみてもらえない案件も舞い込みます。わざわざ工場まで相談に来る方は、本当に作りたいのだという熱意があります。だから、私も真摯に受け答えをします」と、相談者の期待に応えられる方法を考え抜くそうです。同社がWebサイトを立上げて最初に問合せをしてくれたお客様は、大手のディスカウントストアの方でした。Webサイトに記載していたワイヤーカットが、ワイヤーを編み上げる機械と勘違いされての問合せでした。しかし、折角訪ねて来てくれた方ですので、希望の品が出来るように手配をしました。他にも様々な大学の研究室からの相談もあります。その縁もあって毎年注文を頂く研究室や芸術系の学生さんの卒業制作に使用したい部材の製作を求めて来られるそうです。丁官代表取締役に熱心に依頼に対応する理由を訊ねると「やっぱり、それらの仕事は喜んでもらえてやりがいがあるからです」と笑顔で答えてくれました。
アルミ板への印刷など自社で出来ないものでも相談が舞い込む
機会を活かしてチャレンジを続ける
丁官代表取締役は、地域活動や個人向けに商品の販売を行うなど幅広い活動を行っています。例えば、墨田区を含む地域の産業活性化と参加企業との共生・相互成長、さらには企業単体としての収益性向上を目的とする「すみだ新商品開発プロジェクト」という地域活動に参加しています。そこでは、平時でも災害時でも活用できるフェーズフリーの災害対応型リヤカー移動図書館「北斎丸」を地域のイベントに出展するなどの活動をしています。また、インターネットのフリーマーケットサービスを活用して、工場で発生する端材を、個人の方にも販売しています。ハンドメイドアクセサリー作家の方からの依頼で製造したベゼルワイヤー(立て爪の付いている幅のあるワイヤーでパワーストーンなどの石を固定するもの)は、かつて、東京スカイツリー®にあった墨田区内で生まれた製品を販売するショップ(現在は、閉館)での販売も行いました。「やっぱり、新しいことを積極的にやっていかないと既存の仕事だけでは生き残れないと思います。そして、今でも新しい発見があります」と、ものづくりで新しいものが生まれる今を楽しんでいる丁官代表取締役の姿がありました。
(左)ベゼルワイヤーと(右)パワーストーンネックレス
取材日:2023年12月22日
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