エスエージーバルーンズ株式会社
エスエージーバルーンズ
[業種]大分類:製造業 中分類:ゴム製品製造業 小分類:その他のゴム製品製造業
ゴムからフィルムへの一大転換でヒット商品を生む
エスエージーバルーンズは、1959年に墨田区内にて伸栄ゴム商事として創業しました。創業当時は、ゴム風船やビニール玩具の仕入れと販売を行なっていました。その後、1978年に、フィルム素材を使った風船にヘリウムガスを注入する「マイラーバルーン(UFO風船)」の製造を開始しますが、当時のフィルムはガスバリア性が低く、数週間で浮かなくなり、その度にヘリウムガスを補充する手間が必要でした。そこで、より長く浮き続けるバルーンをつくろうと、1989年に気密性が高く、1ヶ月以上も浮く高ガスバリアーフィルム「エバール®」を、世界で初めてバルーンの素材に使用しました。そして、そのガスバリア性を活かし、長く楽しめる4つ足の「エアリーダックス」を同年に発売します。さらに進化した「お散歩バルーン」を1999年に発売すると大ヒットとなり、2022年には累計1,000万枚以上を販売し、イタリアとアメリカの代理店を拠点に世界中で販売されています。
(画像:あとをついてくるようにフワフワ浮く、子どもに人気の「お散歩バルーン」)
装飾用バルーンの開発と販売促進の提案
「マイラーバルーン(UFO風船)」や「お散歩バルーン」などの玩具用バルーンに留まらず、蓄えてきたノウハウを活かし、パーティーなどのイベントやTV番組のセットなどに使用する様々な装飾用バルーンの開発と製造を行い、次々に発売しました。
1995年に発売した「デコバルーン®」は、割れないことと、サイズとカラーバリエーションが豊富なことが特徴で、飾り花に取って代わるほど売れたそうです。2003年に発売した「4/B(フォー・ビー)バルーン」は、ヘリウムガスで浮かせることができるため、施工時の高所作業が不要になるなど設置時のメリットがあるだけでなく、高さのある空間を華やかに装飾できます。2000年に発売した「ウォールバルーン」と2009年に発売した「エアビルダー®」は、人が通ることができるアーチや空間を仕切る壁などの立体造形物を作ることが出来ます。さらに、ソフトウェア「ウォールバルーンエディタ」を使用することにより、発注者自らが、立体造形物のデザインを行うことが出来ます。
また、同社はこれらのバルーンのデザインや形状をカスタマイズし、販売促進ツールとして企画、提案することも得意としています。さらに、単体バルーンにイラストや文字などのデザインを入れたい場合は、独自開発したソフトウェア「3Dバルーンシミュレーター」を活用します。平面のデザインデータから立体に膨らませた際のバルーンのイメージを事前に発注者に確認してもらうサービスで、製品購入前後のイメージの齟齬を減らす工夫をしています。
ウォールバルーンエディタ(左)、設置されたウォールバルーン(右)
高品質で選びやすい商品構成とサービス
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国内だけでなく世界で愛されている商品群
同社の商品は海外にも輸出をしています。バリエーション豊かな「お散歩バルーン」と「4/Bバルーン」が人気です。
(画像:色とサイズのバリエーションが豊かな「4/Bバルーン」) -
国内生産品質向上のための修正と改善の積み重ね
製造過程で修正や改善があればこまめに対応し、品質の向上に努めています。例えば、スポーツ観戦時などに使う応援スティックはバンバン叩いても、繰り返して使っても高い耐久性を備えています。
(画像:応援スティックDX) -
ソフトウェアの活用で顧客の不安を解消
平面のデザインとバルーンで膨らました際のイメージのギャップ埋めるために、ソフトウェアを独自開発。サンプル作成の時間などのコスト削減を実現させました。
(画像:3Dバルーンシミュレーターの画面)
危機感からチャレンジをするも大失敗
展示会にも度々出展し、順調に商品展開と販路の拡大を行ってきましたが、2012年にヘリウム危機と呼ばれる世界的なヘリウムガスの供給不足が発生しました。これにより、バルーンを浮かせるためのヘリウムガスの価格は高騰し、入手困難な状況に陥りました。将来、本当にヘリウムガスが入手できない状況になったらどうなるのか?と、営業部の渡部涼さんと当時はまだ若手だった製品管理部の望月有希さんは、危機感を抱きました。そこで、ヘリウムガスを使用しないリテール商品(個人を対象とした小売り)の開発を社内で提案します。それまでは、装飾用や販売促進用のバルーンを必要とする企業との取引(BtoB)や最終消費者へ販売を行う企業との取引(BtoBtoC)を行っていましたので、個人を対象にした商品開発は、新たな販路開拓でもありました。これまで培ってきた経験を注ぎ込み、携帯音楽プレーヤーやスマホのスピーカーになる「AUDiO PETS(オーディオペット)」の発売を2013年にこぎつけました。しかし、価格を高額設定してしまったこともあり、全く売れませんでした。ユニークな製品を作ることが出来ても、売れる商品を作ることまでは出来ていなかったのです。当時はまだ、市場ニーズを調査してターゲットを定めて生産や販売を考えるというマーケティングが不十分で、同社の開発力や技術力を詰め込んだ商品であったことが、売れなかった原因だと、当時を振り返って分析しています。
取材に応えていただいた製品管理部の望月有希さん(左)と営業部の渡部涼さん(右)
失敗を糧に未来を切り拓く
渡部さんと望月さんは、自分たちに不足していることを冷静に分析する中で、次の機会を掴みに行きました。それは、墨田区が実施するデザイナーとのコラボレーションにより新商品を生み出す事業「ものづくりコラボレーション」への応募です。そこでは、既存製品の機能を転用した商品開発をデザイナーとともに行い、同社で以前から販売しているマグネット入りフィルムバルーンの「マグパンチ」という製品を応用した「クライミングマン」を開発しました。そして、この製品は、2017年、墨田区が認証する「すみだモダン」ブランドとして認証されました。順調に歩みを進め、商品展開を行おうとした矢先、コロナ禍に巻き込まれ、イベント中止などの発生で売上に大きな影響が出てしまいました。
ものづくりコラボレーションで生まれた「クライミングマン」
次なる転機と新商品開発
コロナ禍の中、東京都中小企業振興公社が実施する「事業化チャレンジ道場」を知りました。これは、参加する企業が企画・製品化・量産化・商品化・販路開拓までのプロセスをカリキュラム形式で習得し、デザインインストラクターのサポートのもと新商品を試作しプレゼン、道場修了後も自力で開発に取り組めるようになることを目指す実践的なプログラムです。ここでは、主体的に商品開発のためのアイデアを出すため、講義で出される課題の検討がとても苦痛だったと、渡部さんと望月さんは当時を振り返って苦笑します。この道場で出会い一緒にアイデアを育んできた、デザインインストラクターの坂井浩秋さんとは、プログラム終了後に個別契約を行ったことで、坂井さん自身も主体的に提案できるようになり、全面的なサポートを受けています。そして遂に、2023年、個人向けのギフト商品として空草(空想)植物「QooSo Plants®(クウソープランツ)」の展示会出展を実現しました。新商品の開発で、壁に当たることはよくありますが、「QooSo Plants®(クウソープランツ)」の場合は、バルーンを膨らませるポンプのコンパクト化に悩まされたそうです。ギフトとしてポストに投函できるようなパッケージにしたい思いながらも、ポンプのコンパクト化に行き詰まっていました。すると、代表取締役の矢部信彦さんが一緒に考えてくれて、数日で原理モデルが出来上がり、最終的には、とても小さなふいごのような、空気を入れることも楽しめるデザインのポンプを開発しました。
さらに、今年、2024年には、坂井さんにパッケージをリブランディングしてもらい、折り鶴をバルーンにした「ORIZURU HAPPY BALLOON(オリヅルハッピーバルーン)」も展示会に出展するなど、ビジネスの次の柱を作るため、渡部さんと望月さんは今なお、邁進しています。
印象に残りやすい、ポストに投函できるコンパクトな製品パッケージの「QooSo Plants®(クウソープランツ)」(左)と「ORIZURU HAPPY BALLOON(オリヅルハッピーバルーン)」(右)
取材日:2024年1月17日
動画で見る「エスエージーバルーンズ株式会社」
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