有限会社マルヨシ

マルヨシ

[業種]大分類:製造業 中分類:なめし革・同製品・毛皮製造業 小分類:その他のなめし革製品製造業

会社紹介 PICKUP特集

未来を見据えて様々なチャレンジをする(画像提供:有限会社マルヨシ)

需要の変化に柔軟に対応する社風

マルヨシは、丸山智義代表取締役社長の父、丸山雅好さんが1958年に駒込神明町(現本駒込)にて革手袋製造工場して創業しました。同じ革製品でも婦人・紳士用革ベルトの需要が多かったため、3年ほどで革ベルト専業となったそうです。様々なブランドのOEM(他社製品の製品製造)で革ベルトづくりを行っていましたが、やがて海外で生産されるようになってしまいました。そのタイミングで先代の代表取締役社長宛にペット用品づくりの依頼がありました。製造する種類が大きく変わるため先代は随分と悩まれたそうですが、当時入社して間もない丸山代表取締役社長の新しいことへチャレンジしてみたいという意見を採用し、本革やナイロンを使用した首輪・リード・ハーネス等のペット用品づくりへ踏み出します。革ベルトづくりの技術を活かして、お客様の細かいオーダーに応じていくうちに、ペット用品が売上の多くを占めるようになったそうです。

丸山智義代表取締役社長(写真左)と息子の圭太さん(写真右)




需要増に応える三代目の経験と知識

革ベルトやペットの首輪は製造工程ごとに分業となっていましたが、大ロットの製造が海外に移ったことで国内の工場は減少しました。外注先も廃業していったため、丸山代表取締役社長は工程の内製化を推し進め、今では製造工程の殆どを自社内で完結出来るようになりました。そして、コロナ禍の巣ごもり需要で、ペットの販売数が伸びると共にペット用品の需要も増えました。首輪などのペット用品を小ロット多品種で製造する工場が減ってしまったため、OEMの注文が続々と舞い込みます。しかし、人手が足らなくなってしまいました。そこで、休日などに縫製などの手伝いをし、家業に理解のある息子の圭太さんが、三代目として金融機関を辞めて働くことになりました。そして、親子で力を合わせて需要の増加に応えました。とは言っても、昔ながらの工業用ミシンの能力には限界があり、製造が追いつきませんでした。そこで、圭太さんは、前職での経験を活かし、補助金を活用して最新鋭の工業用ミシンを導入しました。これまでは、縫製するものの素材や厚さに応じて、ミシンの調整を一つ一つ行っていましたが、プログラムを組んでミシンに指示できるようになったため、作業時間を短縮させることができました。



プログラム通りに縫うことが出来る最新鋭の工業用ミシンを操作する圭太さん

機械と手作業でコツコツと作り上げる革の首輪

  • 抜き型を使って革を打ち抜く

    犬の首周りに優しく沿うように設計されたオリジナルの抜き型を使い、ひとつひとつ丁寧に打ち抜いて行きます。
    (写真:今では珍しい歯車式のクリッカー(革打ち抜き機))

  • 縫製のとても重要な機能

    革は、引っ張られると伸びる性質を持っています。使用時の、伸びを抑えるために縁をミシンで丁寧に縫い上げます。革の厚さや縫い方などで、複数台のミシンを使い分けています。
    (写真:集中力の持続が求められる地道な縫製作業(画像提供:有限会社マルヨシ))

  • 機械と手作業でコツコツ作り上げる

    大型犬・小型犬といった犬種に適した革の素材・質感・太さなどがあります。時には、お客様の要望に応じ、経年変化する革と馴染む真鍮などの装飾品や金具素材の提案をすることもあります。
    (写真:ペットの歳と共に味わいを増す首輪(画像提供:有限会社マルヨシ))

技術とビジネスをバランス良く学び、取り組む

前職の経験から財務の知識がある圭太さんは決算書を読み解き、顧問税理士からもヒアリングを行った結果、事業を継続するために自社に、さらなる強みを持たせようと考えました。丸山代表取締役社長からも、首輪の平面な物を作る技術だけでなく、立体物を作る技術を習得し、対応できる商品の幅を拡げる必要があると、鞄作りの学校への入学を勧められます。このように、圭太さんは、将来に向けて経営のための財務とものづくりのための技術を両輪として力を蓄えていくことを、最初から強く意識して取り組んでいます。さらに、後継者・若手経営者育成ビジネススクール「フロンティアすみだ塾」に参加したことで、同期だけでなく、卒業生にも頼れる仲間が大勢でき、異業種の方たちから大いに刺激を受けたそうです。こうした成長のための取組みを行いつつ、自社における新たな取組みとして、Webサイトを「下町商店」と名付け、ものづくりの理念とサービスを伝わりやすくする工夫をされています。この中で、ペット業界に新規参入する方に関しては、受注した製品を製造するだけでなく、ブランドコンセプトから製品告知までの様々な相談にも対応されています。
(写真:仕事の合間に鞄などを作り、技術を磨いています。(画像提供:有限会社マルヨシ))

ファクトリーブランドから作る未来

2023年には、革の魅力を発信していこうというコミュニティ「革童(かっぱ)」や、東東京の優れたものづくり企業の方々と共に取り組む「東東京モノヅクリ商店街」に参加し、活動の幅を広げていきました。さらに、2024年には、「ペットに優しくていいもの」を展開する自社ブランド「丸好革帯製造所」を立ち上げました。そのブランドでは、OEM工場である同社が循環型社会に貢献することを目指し「n.t.cow」「n.t.pig」という2つのシリーズを展開しています。それらには、タンニンという植物からとれる渋み成分でなめされた革を使用しており、頭文字の「 n.t(natural tanned)」とは「自然由来の成分でなめされた」という意味です。商品である首輪は、犬の首に食い込まないように面で受け止めるように獣医さんのアドバイスを受けデザインしたそうです。縫製のきれいさなどの見た目だけでなく、犬にとっての使い心地までを考慮し、改良を重ねて製品化しました。しかし、圭太さんは「自社製品で売り上げを立てる方向だと現状受注や発送などにリソースを割けません」と言い切ります。このブランドでは、あくまで、革を使ったものづくりと自社のPR、そして、商品への世間の反応を知ることを最初の目標としているそうです。大規模展示会、ギフトショーへの出展も果たし、今後はマルシェなどの出展も検討しているそうです。

ブランドロゴとブランド商品第一弾の首輪(画像提供:有限会社マルヨシ)

次なるステップを目指す

圭太さんは「様々な新しいチャレンジを行っていますが、ビジネスの中心はOEMです」とこれまで育ててきたビジネスを大切にしていきたいと語ります。つまり、新しいチャレンジにより、OEMに携わる時間を減らしては本末転倒だということです。また、親子二人だけでは展示会や営業活動に時間を割くことは難しいという現実もあります。その時間を生むためには、人を雇用出来る利益を確保し、その人が自分たちと同じことが出来るように育てる必要があります。圭太さんが家業の一員となってからの取り組みで分かったことは、OEM事業で力を蓄えることと新しいチャレンジのバランスです。それにより、新たに人を雇用することや、将来のさらなる事業展開に繋がっていると圭太さんは話してくれました。
(写真:将来について楽しそうに話す圭太さん)



取材日:2023年11月23日


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