なおいこうじ

ナオイコウジ

[業種]大分類:製造業 中分類:その他 小分類:装身具・装飾品・ボタン・同関連品製造業(貴金属・宝石製を除く)

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無数の職人の技術を体系化した本所装身錺

可愛らしく、かつ緻密な桜のデザインと繊細な色合いのアクセサリー。 なおいこうじさんは、「本所装身錺(ほんじょそうしんかざり)」という独自の技法で、アクセサリーのブランド「なおいこうじ」を立ち上げています。 本所装身錺とは、どのような技法なのでしょうか。まずはその成り立ちから探ってみましょう。 その由来をたどると、鳥越のかんざし職人の下で修業したなおいさんの祖父とその兄が、洋装化に合わせてかんざしの技法を用いてアクセサリーをつくった90年ほど前に始まります。 線を曲げてつくるまげ線、パーツ同士を溶接する「よせもの」などの技術を基本としながら、時代とともに製作工場が増えるにつれていろいろな職人が増え、需要に合わせて多様な技術が生まれました。「低温七宝」といわれる技術(樹脂を用いた七宝焼)もその一つです。 徐々にアクセサリーは、ジャンルごとに分かれてくるようになっていき、それぞれ違うものをつくる技術になっていったのです。例えば、キーホルダーや結婚式用のティアラ、彫金で原型をつくるキャストものなど。ただ、職人の後継者不足から人材が足りないという状況があり、なおいさんは依頼に応じてアクセサリー製作におけるさまざまな技術を一通り身につけていきました。 「こうしたことをバラバラにやっていたのでは効率が悪い。ひとまとめにして体系化したら面白いのではないかと考えました。多様な技術をすべて詰め込んで4年前につくりあげたのが、この『本所装身錺』です」 このように90年の間に、祖父とその兄が編み出した技術を基盤に多彩な広がりを見せていた技法を再び体系化したのが、なおいさんというわけです。


複雑、そして多岐にわたる工程

その技法とはどのようなものか、簡単にワークフローを見てみましょう。 まずは、アクセサリーの型をつくる工程です。ジュエリー製作でも使用する蝋の塊を用い、機械によって「ワックス原型」と呼ばれる花の型をつくります。これを鋳造屋に持ち込み、石膏に入れ、鋳口を付けて石膏に埋めて燃やす。すると中にパーツの空洞ができ、そこに銀を流し込みます。 この段階では、花の形は平面です。そこで、これを叩いて曲面を付けて花らしく模ります。ポイントは、後で塗りの工程で釉薬(ゆうやく)が流れ出ないように縁をつくることです。これは、また別の鋳造所で真鍮を用いて製造します。



次にさまざまな花を、「よせ」の技術を用いて溶接し、完成像の型をつくります。金属の流れなども計算しながら、型をつくる工程です。この型をもとに、上記とは別の鋳造工場で錫(スズ)の合金を流し込み、量産する製品のもとができる。ここにメッキを施し、塗りの工程に移ります。 塗りは、なおいさんがイメージするのは日本の伝統色です。元になる画料をエポキシ樹脂と混ぜ、塗っていく。1色ごとに窯で焼き、色を固定させてから、別の色を塗る。これを繰り返して製品は完成となります。 ごく簡単に説明するとこのようになりますが、一つのシリーズが完成するまでに3〜6か月を要する極めて手間のかかる製作工程です。職人の後継者も皆無に近く、いかにして存続させられるかが、課題となる希少価値の高い技法と言えるでしょう。

塗りのポイント

  • 色のバリエーション

    桜シリーズにうまく合致するよう、淡蘇芳色(うすすおういろ)、珊瑚色(さんごいろ)、不言色(いわずいろ)、瓶覗色(かめのぞきいろ)などをはじめ、和の伝統色を用いています。

  • 注射器のアレンジ

    全行程にわたって細やかな作業ですが、特に塗りの技術は繊細さとセンスが要求されます。塗りに利用する注射器には、最適化を目指し独自のアレンジを施しています。

  • エポキシ樹脂

    エポキシ樹脂は一種の強固な接着剤で、熱で固まりガラスのような光沢を醸し出します。画料にエポキシ樹脂を混ぜることで窯焼きによる色の固定化が確実なものとなるのです。

和の伝統色とマッチする桜シリーズの魅力

当初は漠然と「花」をモチーフにして作品を製作していたが、あるミュージシャンが言った「日本ではサビがないとヒットしない」との言葉をヒントに、バラをモチーフにした作品製作を開始。しかし、コロナ禍に直面し、複雑な形状のバラではパーツ製作も数多く必要となり、外注先の職人工房が対応できなくなってしまいました。 そこで、和の伝統色でバリエーションを出せるサクラをモチーフとすることにしたそうです。繊細なデザインとさりげない和のテイストはその美しさと可愛らしさが人気を集めています。 現在、サクラのシリーズ作品では、髪飾り、ピアス、ネックレス、ブレスレットなどの種類があります。

イベント・フェアを中心とした販売展開

一つのシリーズの製作に3か月もの時間を要することもあり、作品は特定の店舗での販売ではなく、インターネット通販とイベント・フェア等での販売に限っています。インターネット通販としては、国内最大級のハンドメイド・手づくり通販サイト“minne”へ出店し、イベント・フェアはハンドメイド系やデザインフェスタなどの展示会などに出展することが多いそうです。こうしたイベント等では、ヘビーユーザーも多く来場します。

ふくらむ今後の構想

複雑な工程・技術を体系化し「本所装身錺」を編み出したなおいさんですが、実はコロナ禍を機にこの工程に関わる工房では人手不足からコスト面や納期面で大きな影響を受けるという現実に直面しています。技術の継承という視点でも過渡期にあると言っていいでしょう。 そんな中、なおいさんは、アクセサリーに限らずハンドメイドのものづくり教室、ワークショップを開きたいと考えています。また、自分自身がイベントの主催者になりたいという構想も抱いているところです。 実質的に現在1人で背負う本所装身錺の継承、そしてハンドメイドを広める活動にも期待していきましょう。

動画で見る「アクセサリー作家:なおいこうじ」

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